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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(オ)354号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人久保田美英、同山根滝蔵の上告理由第二点について。

未登記の建物所有権が売買によつて他人に移転した場合においては、所有権取得者は判決をえて自己の所有権を証明して単独に保存登記をなすことを得るが(不動産登記法一〇六条二号)、また従来の所有者に対して移転登記の請求をなすこともできるのであつて、この場合には従来の所有者は先ず保存登記をした上で所有権取得者に対して移転登記手続をなすべき義務を負担するのである(大正七年(オ)四四八号同年六月一八日大審院判決、民録一一八五頁参照)。それ故、原判決が上告人に本件建物につき売買を原因とする所有権移転登記手続をなすべき義務のあることを判示したことはもとより正当であつて、原判決には所論の違法はない。

同第三点について。

一筆の土地の一部といえども、売買の目的とすることをうべく、その部分が具体的に特定しているかぎりは、右部分につき分筆手続未了前においても、買主はその部分につき所有権を取得することができることは、すでに当裁判所の判示したとおりである(昭和二八年(オ)八四七号、昭和三〇年六月二四日第二小法廷判決、集九巻七号九二〇頁以下)。それ故、右と相反する見解に基く所論はすべて採用できない。その他の論旨は、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない(論旨第一点所論の鑑定は、原審の口頭弁論において申立てられなかつたことは記録上明らかである)。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)

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